たった4人の構成員のうち2人が利害関係者

そもそも、大林氏のような政府系会議の委員はどのように決まるのだろう。これは、

・政治家が推し込む
・官僚が推し込む
・業界団体が推し込む

の3パターン以外にはない。政治家推しの委員は規制改革担当大臣や副大臣、またはその他有力政治家のブレーンもしくはスポークスマン的な立場の人が多い。官僚が推し込む委員は①主要官庁のOBなど各役所の意向を会議の中で推してくれる人、②振り付け(大臣や官庁の意向)に異議を唱えないおとなしいタイプの人に大別される。

そして第三が業界団体や利害関係者が推し込むケースだ。もちろん業界団体や企業に政府委員の人事権はないため、政治家・官僚のだれかを経由してその代弁者を送り込むことになる。

今回のケースでは,大林ミカ氏を推薦したのは河野太郎氏とのことだ。そして、大林ミカ氏が事務局長を務め、もうひとりのTF委員である高橋洋法政大学教授が特任研究員を務める自然エネルギー財団の設立者・代表者は孫正義氏である。ソフトバンクグループが長く再生可能エネルギー事業を手がけていたことは周知の事実だろう。

筆者は、審議会や各種会議体において利害関係者が委員・構成員となることは避けるべきだと主張してきた。一方、これまでも多くの審議会等で利害関係者が委員・構成員に選任されてきたこともまた事実である。規制改革を進める大臣や委員会の動きを止めるために十人以上いる委員のひとりに業界関係者を推し込む……というケースは、善し悪しはさておき、よく見る霞ヶ関の風景である。

しかし、たった4人のTF構成員のうち2人が利害関係団体の職員・関係者であること、その人事を推し進めたのが担当大臣である河野太郎氏自身である(と大林氏が言及している)という点で今次のTF問題の特異性がある。

法的根拠はないが、議論に大きな影響力を与えている

さらに再エネTFはその法律・組織上の位置づけと、与えられている権限に少なからぬ乖離が見られる。

内閣府における規制改革関連の案件は、通常、規制改革推進会議で議論される。規制改革推進会議は内閣府設置法第37条第2項に基づいて設置される審議会である。個々の論点は、規制改革推進会議参加のワーキンググループ等で審議されたのちに規制改革推進会議本会議での審議を経て答申となる。

内閣府庁舎
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです

このような審議結果は、半年ごとに『規制改革推進に関する答申(中間答申)』にまとめられ、この答申に基づいて各年の『規制改革実施計画』が策定される。『規制改革実施計画』は実際の政策の政府案にかなり近いものと理解して良い。

再エネTFは規制改革推進会議傘下の会議体ではない。その設置にも法的な根拠はなく……形式上は規制改革担当大臣の私的諮問機関とかわらない。それにもかかわらず、ある時期から再エネTFでの議論が『規制改革推進に関する答申』に盛り込まれるようになっている(例えば「規制改革推進に関する中間答申(R5.12.16)」 など)。

規制改革推進会議によって審議され作成される『答申』に、規制改革推進会議を経ない内容が記載されているのだ。そのため、再エネTFでの議論については「参考」と表記されているが……実施計画の段階では当然ながら「参考」の記載は無くなる。