事業を拡大していく際のポイントは何か。連続起業家の遠星誠さんは「社長のやるべき仕事や役割は、フェーズごとに変わる。第一フェーズでは営業が最も大事で、あとはコストを抑えてとにかく黒字を出すことだ。第二フェーズとなる自分で作ったビジネスモデルをコピーして拡大する段階に入ったら、スタッフを増やし今後のためにスタッフ育成をする。第三フェーズは、スタッフ育成の結果に左右されるが、この段階では社長が現場に立つ会社はたいてい失敗している」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、遠星誠『100万円のスモール・ビジネスを3年以内に3000万円で売却する ミニマム・イグジットの教科書』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

仕事中に窓に向かい考え込む人のイメージ
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ミニマム・イグジットまでの三つのフェーズ

ミニマム・イグジットまでの事業成長は、三つのフェーズをたどります。

第一フェーズは、起業してから黒字になるまでの1年。つまり、その会社が今後、存在・成長できるかどうかが試される時期です。

日本政策金融公庫の「2023年度新規開業実態調査」によると、創業された企業の3割以上が赤字です。赤字ということは当然、手元の資金は減少し続けます。したがって、創業のために準備していた資金(自己資金)や調達した資金(創業融資等)が枯渇し次第、廃業せざるを得ないということになります。

設立された企業の相当数は1年以内に廃業することになるのです。かなり厳しいフェーズです。

別の見方をすると、第一フェーズを乗り切れば一息つけるということでもあります。

この段階ではコストを抑え、とにかく黒字を出すことに集中してください。

第一フェーズで注力すべきは二点、営業とコスト抑制です。

私は会社を設立する前、つまりコストが発生する前にまずクライアントを確保しました。設立してから営業しているようでは手遅れだからです。

もちろん黒字が確定するほどのクライアントを確保することは難しいですが、できるだけ、事前にクライアントを集めてから起業します。それもあって、私が経営してきた会社はいずれも設立直後からずっと黒字続きです。

もう一つのコスト抑制ですが、これは営業の話と密接に関連しています。会社設立直後に黒字を達成するためには営業パーソンが不可欠です。ただ、設立直後においてはあなた自らが営業を行い、人件費を最大限に抑えることが重要です。

この二点を踏まえれば、設立直後から黒字化することはさほど困難ではありません。

ここで大切なのは、実際の制作や納品、サービス対応においては、マニュアルを作成し、「人に任せる状態」を確立することです。教育さえすれば誰でもできる作業を任せ、自分は社長として経営戦略を考えたり、営業で利益を伸ばすなどに専念します。