差をつけるのは難しい商品より営業に投資する

第一フェーズでは商品より営業が大事で、もっとも力を入れるべきなのは営業です。

商品ではありません。よくある失敗は、商品やサービスの質を上げることばかりにコストを使ってしまい、営業をおざなりにしてしまうことです。

こう書くと身も蓋もありませんが、少なくとも今の日本では、商品のクオリティに大きな差は出しにくいものです。それは、裏を返すと商品の力で差をつけるのは難しいという意味でもあります。

ここまで商品やサービスの質が高くなっている日本で、それらのレベルを、同業他社に対する優位点になるまで伸ばすためには膨大なコストがかかります。それより、そのコストを営業に投資するほうがずっと効率がいいのです。

私が営業こそが大事だというのはそういう意味です。

いくら商品やサービスが素晴らしくても、営業が弱いと世間が知ることができませんから、その商品やサービスには意味がありません。当然、売れませんから利益をもたらしません。

逆に、商品やサービスが全然ダメなのに営業だけが素晴らしいと、それは詐欺になってしまいます。

コストをかけて商品のクオリティを上げることは、もちろん可能ではあります。でも、それには非常に大きなコストがかかってしまうのです。

ならば、同じコストを営業に投入したほうが、はるかに効率がいいということです。

営業>商品、という原則を忘れないでください。

営業で「浅く・広く」のコスト配分は絶対に避ける

会社が拡大するにつれ様々な職種のスタッフが必要になりますが、もっとも能力の差が大きく、会社の運命を左右するのが営業力です。

制作スタッフの能力の差は、致命傷にはなりません。厨房のスタッフなら、優秀な人は同時に5杯のラーメンを作れるけれど、普通のスタッフなら3杯だけ、といったイメージです。3杯しか作れなくても、会社の成長には支障がないのです。

遠星誠『100万円のスモール・ビジネスを3年以内に3000万円で売却する ミニマム・イグジットの教科書』(イースト・プレス)
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しかし、営業パーソンの能力の差は歴然です。優秀な営業スタッフは一人でたくさんの契約を取り付けますが、そうでない営業パーソンは、100人いても一件の契約も取れません。とてもはっきりとした差が出るのです。

ですから、営業に関しては、人件費というコストをごく少数の優秀なスタッフに集中するようにしてください。一律の固定給を配るような「浅く・広く」のコスト配分は絶対に避けましょう。

具体的には月に20万円を5人に投入するのではなく、スター営業一人に、100万円を投入してください。優秀な営業は不可欠な人材ですから、それでいいのです。さらに、コミッション(歩合)制にするといいでしょう。

たとえば、基本給は15万円でもコミッションで毎月何百万円も報酬が獲得できる条件を提示します。もちろんフルコミッションも良いでしょう。自然と優秀なスタッフに給与が集まりますし、本人のモチベーションも上がります。

営業パーソンにはコストをかける価値があります。彼らを集めるときも高い給与を用意し、競合他社から引き抜く際に優位となるようにしましょう。

優秀な営業は給与以上の利益を会社にもたらしてくれます。引き抜くということは、すでに他社が教育してくれているわけですから、教育のコストがゼロベースよりもかからないという意味でもあります。ですから、なおさら高い給与を用意できます。

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