寝る前に、次の日のことをあれこれ考えて眠れなくなってしまう時にはどうすればよいのか。柔道整復師の前田祐樹さんは「次の日のことを考えても、焦りが増すだけだ。その代わり、翌日に着る服を準備することをおすすめする」という――。

※本稿は、前田祐樹『ひとりでできる心ほぐし』(マイナビ出版)の一部を再編集したものです。

ストレスで眠れなくなってしまう

心のコリをいち早く察知するのが“脳”です。脳ではどうにか対処しようとあれこれ司令を出すものの、今度は脳が働きすぎて酸欠状態に。結果的に、脳は正常な司令を下せない“緊急事態宣言”を発令することになり、自律神経のうちの交感神経が過剰に活性化することになるのです。

交感神経が優位なままでリラックスモードにシフトできなければ、体だけでなく心も休まりません。不安が大きくなったり、眠れなくなったりという、深刻なメンタルの異常事態も表面化してくるのです。

ストレスと脳の疲れは“心のコリ”を生み、自律神経を乱す要因となります。

“心のコリ”がもたらすメンタルの不調の一つが睡眠障害です。

寝付きが悪い、眠りを維持できない、朝早く目が覚める、眠りが浅く十分に眠った感じがしないなどの症状が続くのが「睡眠障害」です。眠れないために、疲れが蓄積したり、日中に眠気に襲われて注意力が散漫になったりします。

緊張が強く、睡眠時に副交感神経が優位にならないことで睡眠の質が下がります。

「同じ時間に起床し、就寝する」「朝起きたら、朝日を浴びる」といった規則的な生活をくり返して自律神経を整えると、眠れるようになります。

<主な症状>
●寝付きが悪い
●眠りを維持できない
●朝早く目覚める
●眠りが浅く、眠った感じがしない
●日中に眠気が襲う
眠れない人のイラスト
前田祐樹『ひとりでできる心ほぐし』(マイナビ出版)よりイラスト

寝る前1時間はスマホを避ける

スマホやタブレットから発せられるブルーライトを浴びると、睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌が抑制されて睡眠と覚醒のリズムがくずれます。その結果、睡眠不足や自律神経の乱れが生じかねません。睡眠は大事な心身のメンテナンス時間なので、寝る前の1時間はスマホと距離をとりましょう。

暗い部屋でベッドに寝転がりスマートフォンを操作する女性
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです

寝ているそばにスマホやタブレットを置かない

目覚ましアラームをかけているからといって、スマホやタブレットを寝ているそばに置くのは絶対にNGです。夜中、枕元でスマホを充電し続ければ、電磁波の影響を受けて脳波が乱れて睡眠が妨げられます。夜中に目が覚めて、手元のスマホで情報収集を始めると、そこから眠れなくなることも!

就寝するときはスマホは別の部屋に置くか、せめて枕元から離すようにしてください。

リラックス効果が高まる照明や音楽

部屋を明るく保つ照明ですが、いつでもどこでも明るければよいものではありません。

前田祐樹『ひとりでできる心ほぐし』(マイナビ出版)
前田祐樹『ひとりでできる心ほぐし』(マイナビ出版)

照明の色によって、活動する時間に向くものとリラックスタイムに向くものがあります。

日中に活動する場所などは青白く照度(明るさ)の高い照明でもよいでしょう。しかし、睡眠ホルモンのメラトニンは、強い光によって分泌が抑えられる性質があり、青白色の照明から発せられる光にも影響を受けます。

そのため、就寝前の2〜3時間は青白色の照明を避け、オレンジなどの暖色系の照明の下で過ごすほうが、リラックス効果が高まります。寝室の照明は暖色系にして、快適な睡眠へつなげましょう。

また、就寝前の時間はリラックスして、副交感神経を優位にすることが大切です。音楽が好きな人でも、アップテンポで激しい音楽は脳を逆に興奮させてしまうため、寝る前に聞くのは控えたほうがよいでしょう。

おすすめは、川のせせらぎや鳥のさえずりといった自然音です。自然音を聞くと、脳ではαアルファ波という気分が落ち着いているときの脳波が現れることが知られています。ぜひ、自分が癒やされる自然音を動画や音楽サイトで探してみましょう。

布団に入って落ち着いて眠る人のイラスト
前田祐樹『ひとりでできる心ほぐし』(マイナビ出版)よりイラスト

寝酒は寝付きがよくなるが…

眠るために飲酒をする人がいます。寝付きはよくなりますが、眠りは浅く、質の悪い睡眠になります。眠れないのは不安でしょうが、お酒は依存性が高く、寝酒をくり返すと酒量が増えやすい点も心配です。

睡眠不足で日常生活に支障が出るなら睡眠導入剤を使うことも必要です。今は必要な時期と受け止めて、将来的にやめられるように心身をケアしましょう。

寝る前に、翌日に着る服を準備する

寝る前に仕事やプライベートの悩み、やらなくてはいけないことなどを考えて脳が興奮状態のままだと、寝付きが悪くなります。寝る前に、次の日のことをあれこれ考えても、焦りが増すだけです。

その代わり、翌日に着る服を準備することをおすすめします。

翌朝の考えごとをひとつ減らせてストレスが減り、忙しい朝時間を有効に使えます。翌日のことを何も考えないで寝ようとするとかえって不安になる人もいるので、「明日着る服を決めた」という事実を用意することで、達成感を得られて安心できるでしょう。私自身も睡眠前のルーティンとして実践し、安眠できています。

翌日に着る服を準備する人のイラスト
前田祐樹『ひとりでできる心ほぐし』(マイナビ出版)よりイラスト

不眠を解消するマッサージ

東洋医学では、睡眠によって胆のうや肝臓で解毒が進むと考えます。逆もしかりで、胆のうの働きが悪くなれば、睡眠の質も悪化することに。そこで、胆のうの経絡けいらく(ツボの流れ)にアプローチして胆のうと肝臓の機能改善を図り、快適な睡眠をもたらす方法を紹介します。

胆のうの経絡は体の側面を流れていて、特に大切なのが側頭部。耳のまわりをほぐすことで、自然とあくびも出てきます。

耳の周りをマッサージする人のイラスト
前田祐樹『ひとりでできる心ほぐし』(マイナビ出版)よりイラスト
<耳のまわりをくるくる>
①耳の前をマッサージ
耳の穴の少し前のところに手のひらのつけ根の部分を当てて、円を描くように3〜5秒マッサージする。
②耳のまわりをマッサージ
耳のまわりを前から上、後ろにかけて移動させながらまんべんなくほぐす。これを1分行う。

睡眠前に行うと眠りやすくなる、胆のうの経絡ケアをもうひとつ紹介しましょう。耳のあたりにある側頭骨とその上の頭頂骨の間にある「縫合ほうごう」という溝の部分にアプローチします。場所は眉尻から指3〜4本分後ろが目安です。

胆のうの経絡の滞りを改善すると、不眠だけでなく、頭痛や肩コリ、めまい、目の不調、耳鳴り、全身のこわばり、倦怠感なども解消されやすくなります。

<側頭部押し呼吸>
①息をはきながら側頭部を押す
眉尻から指3〜4本分後ろのところに手のひらのつけ根を当て、手のひら全体を添える。
息をはきながら、内側に押し込むように優しく圧をかける。
②息を吸いながら手の力を抜く
息をはきながら、手の力をゆるめる。①→②をくり返して1分行う。