「マスク着用」の習慣は、人間関係をどう変えたのか。立命館大学の宮口幸治教授は「私の授業では、リモート授業でもマスクを着用する学生が珍しくなかった。学生に限らず、多くの日本人はもう、マスクをはずしたくないのかもしれない」という――。

※本稿は、宮口幸治『素顔をあえて見せない日本人』(ビジネス社)の一部を再編集したものです。

マスクを着けてパソコンに向かう男性
写真=iStock.com/ridvan_celik
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リモート授業なのにマスクを外さない学生

私は勤務先の大学のゼミを、状況に応じてオンラインで実施することがあります。新年度のゼミを開く際に、私は学生たちと面談をしましたが、その時もオンラインミーティングツールのZOOMを使いました。不思議な現象が起こったのは、ゼミが始まってからです。

学生の何人かは、自宅からネットにつないで、ゼミに参加します。私との1対1の面談では、お互い顔が見えるようにマスクをはずしていました。ところがゼミが始まると、画面の向こう側の景色が少し変わります。一部の学生は、自宅にいるにもかかわらず、マスクを着けているのです。

同じ部屋に誰かがいるのであれば、感染対策をしているのだなとわかるのですが、その部屋にいるのは学生一人だけです。私は学生たちに、マスクを「着けてください」とも「はずしてください」とも言っていません。気にしているつもりもなかったのですが、「この学生はマスクを着けている」といったことは事実として目に留まります。

コロナ前は、風邪でもないのに対面でマスクをするのは相手に失礼かもしれないと、感じるのが普通でしたので、違和感というほどではないのですが、「あ、マスクをしていることも彼らには普通なんだ」という驚きを私は感じました。一方の学生たちは、すでにマスク生活に順応しているのか、マスクを着けることにはあまり違和感もないようです。ゼミの最初のうちは、数人がマスクを着けているだけです。

もっと驚いたのが、それを見た自宅参加の別の学生が、途中からマスクを着け始めたのです。