運動と食事だけでなく、「社会参加」も必要

「物忘れ」の増加も深刻です。筑波大学大学院の研究グループは、外出自粛が高齢者の健康に深刻な影響を与えているとの調査結果を発表しました。

40代以上の17%が「自分の健康状態が悪くなっている」と回答。60代以上では、27%の人が「同じことを何度も聞くなど、物忘れが気になるようになった」、50%の人が「生きがい、生活意欲がなくなった」と回答しました。

外出できない状態が続くため、運動不足による体の不調だけでなく、認知機能の低下や精神状態の悪化も生じているのです。

看護師が手をつないで養護施設で歩く杖を使う年配の女性
写真=iStock.com/Ridofranz

フレイルを防ぐためには、運動、栄養、社会参加の3つが重要で、一つでもかけると衰弱が進むとされています。また、フレイルは「可逆」、つまり、対策を講じることによって、進行が緩やかになるだけでなく、健康に過ごせていた状態に戻すことができるそうです。

フレイルによって要介護者が増えるのを予防し、高齢者の健康寿命を延ばすために、地方自治体も、フレイル予防に取り組んでいます。

人口およそ4万で約3割が高齢者の兵庫県西脇市では、「1週間、誰とも話していない。日本語を忘れそうだ」との住民の声に応えて、「健幸運動教室」を始めました。

子供にも理解しやすい言葉で手紙を書く

体を動かすだけでなく、科学的な根拠に基づいた「フレイル予防」を掲げ身体機能の維持を目指します。長崎県佐世保市は、高齢者と子供が手紙をやりとりする取り組みを始めました。子供にも理解しやすい簡単な言葉で手紙を書いたり、感情を表したりすることで脳が刺激され、認知機能を維持することができるとされています。

運動、栄養、社会参加という3つの要因は、独立ではなく相互に関わり合っていると思われます。ですから、どれかの要因を変えれば、他の要因もその影響で変わるでしょう。

最も重要なのは、他の人との会話を進めることではないかと、私は思います。この点から言うと、地方公共団体による以上のような取り組みは確かに評価されます。しかし、その具体的手段は、人々が会う機会をコロナ前の状況に戻そうということが中心になっているのではないでしょうか?

コロナによってさまざまな条件が変わったことに注意を向ける必要があります。例えば、Zoomなどのオンラインミーティングは、コロナ以前であれば技術的に可能であっても、人々がそれを受け入れませんでした。ところがコロナによってごく普通のミーティング形態として多くの人が受けいれるようになったのです。