ポイントをもらった人は無駄な買い物をしてしまう

そもそも、楽天グループの最大の競争優位は楽天ポイント経済圏にあると一般的には言われています。さまざまな調査結果を総合すると、「もっとも活用するポイント」という切り口では楽天ポイントが日本最大のポイント経済圏で、日本人の約3分の1が楽天経済圏に囲い込まれているといいます。

ではそれだけのユーザーが楽天経済圏に囲い込まれていることで、楽天はいくら儲かっているのでしょうか? これが古典経済学では実は説明ができないのです。その理由はポイント経済圏の効果は比較的新しい分野である行動経済学的な経済効果だからです。

たとえば私自身の行動で説明すると、楽天ポイントが2000円ぐらい貯まっているときに実につまらない変なものを買ってしまうことがあります。

「どうせポイントはタダだから」

と普段はぜったいかぶらない、出オチのようなジョークが描かれた帽子を買ってしまったりします。

古典経済学ではこういった行動は合理的には説明できません。なぜなら2000円のポイントはタダではなくて2000円だからです。でもなぜかポイントをもらった人は心理的な錯覚で「ポイントはタダだから」と無駄な買い物をしてしまうことが知られています。行動経済学的にはポイントを付与すると無駄な消費が確かに増えるのです。

オンラインショッピングをする人
写真=iStock.com/Tero Vesalainen
※写真はイメージです

日本人は値引きよりもポイントを欲しがる

もうひとつ行動経済学的な視点でよくいわれることが、日本人は値引きよりもポイントを欲しがるという謎行動です。私自身の例で話をすると、私のステイタスだと楽天市場ではだいたい6~7%のポイント還元を受けられます。一方でアマゾンでの買い物だと1%しかポイントがつきません。

それで同じ商品がアマゾンだとタイムセールで10%引になっているような場合があります。このような場合、アマゾンで買ったほうがあきらかに安いのですが、多くの消費者がポイント還元率の高い楽天市場で買ってしまう。これが行動経済学で観察される消費者行動です。

こういった行動経済学的な知見から、今回の謎をひもとくことができます。

楽天グループの最大の強みは楽天ポイント経済圏にあります。その優位性の源泉は「人間は経済合理的ではない」という要素に支えられています。そしてそのポイント経済圏に新たな侵略者が出現します。それがキャッシュレス決済でした。