なぜ女性に便秘が多いのか

便秘は、さまざまな病気と関連があることがわかってきています。たとえば便秘の人は、大腸がんや心疾患、脳卒中を起こしやすく、快便の人のほうが長生きするともいわれています。

便秘の症状にもバリエーションがあって、排便回数の減少や排便困難感、残便感などさまざまです。一般的に便秘の原因となるのは、年齢や性差もありますが、食生活や生活習慣の乱れ、ストレスによるところも少なくありません。また、便秘を引き起こす薬剤や病気もあります。

便秘は、やはりといっては失礼ですが、女性に多く見られます。女性に便秘が多い原因としては、筋力の低下、食事量が少ない、ホルモン(註12)という、3つの原因があると考えられています。

睡眠不足が与える影響

睡眠の影響は、どうなのでしょうか。睡眠の質が悪いと、便秘を悪くする影響を与えているようです。

便秘の原因として生活習慣の乱れと書きましたが、睡眠はどこまで関係しているのでしょうか。不眠症など睡眠障害で通院中の人では、便秘のリスクが高いという報告があります(26)

睡眠時間が短い、あるいは睡眠の質が悪いと、便秘リスクは上がります。まず、健康な人では、食事をとることによって大腸(結腸)の運動が活発になるのですが、睡眠不足の人ではこの反応が起きにくいといわれています(27)

また、交感神経系がはたらくと腸の動きは抑制されるのですが、睡眠不足によるストレスで交感神経は睡眠中、とくにレム睡眠では活発になります。結果的に腸の動きは悪くなり、便がスムーズに下のほうに移動しなくなります。

また、睡眠不足や短時間睡眠によって、インターロイキン6やC反応性タンパク質など炎症物質も増加します。この炎症反応も腸の動きを悪くし、便秘をひどくしていると考えられています(28)

一方で、睡眠時間が長すぎるのも良くないというデータもあります。2022年に、アメリカ国民健康栄養調査から、便秘と睡眠との関係の解析結果が発表されました。

対象は1万1785人であり、平均年齢は45~47歳、男女比はほぼ半々です。便秘の割合は、男性の4.3%、女性の10.2%でした。睡眠時間との関連では、女性では、睡眠時間が長い人のほうが、便秘になりやすいという結果でした(29)