ゲーム・スマホ漬けの子も強度依存症になりうる“家庭環境”

三宅さんは依存症に陥りがちなケースとして、たとえば、人から良く思われたいという気持ちが強く、嫌われると孤立してしまい、死にたいと思う人もいるという。自分のことを言葉で伝えるのが苦手な人も多いとも。自らの経験も振り返り、次のように説明する。

「こうあるべきだという考えが強いと、ストレスを大きく抱えてしまい、発散しにくくなる。たまたま出会ったギャンブルなどで癒された気持ちになる。私も高校時代は劣等感が強くあり、酒を飲んでいた」

依存症から立ち直る方法について、前出の田中さんは自助グループによるグループ療法をアドバイスする。「仲間たちとの共感がすごく大事です。仲間でないと支えられません。気持ちが楽になれたと思うまで、だいたい2年くらいかかります」と話す。

ひとりで悩まず、同じ問題を抱える人が集まり、話し合うことで悩みを共有し、問題解決のプロセスを確認できる。さらに、次のようにも言う。

「誰かの役に立つという居場所を感じることなどで、人間らしい本能が戻ってきます。社会貢献で回復する、不思議な病気です」

三宅さんは、ワンネス財団が基本にすえる「Well-Being(ウェルビーイング)」を重視する。身体的、精神的、社会的に良好な状態で、幸せを意味する。どうして自分は生きづらいのか、こんなにストレスを抱えているのか、と感じている依存症の人たちは、このウェルビーイングが低いという。依存症の人はストレスへの対処能力が低く、第三者がサポートする必要性を強調する。三宅さんは若い人のことを心配し、次のように話す。

「誰かに話すなど、ストレスに対処する能力が弱いことがあります。若い人がギャンブルなどに出あってしまう可能性はあり、それに振り回されない人になれるように、親や地域社会が自分のこととしてとらえていってくれるといい。依存症になって問題を起こしたとしても、社会から排除されるのでなく、社会復帰できる余地があるほうがいい」

日本には競馬、競輪、競艇、オートレースという公営競技がある。公営のギャンブルは自治体にとって重要な収益源で、関連業界もある。田中さんは、関連業界からの圧力もあるとみており、一般人がギャンブル依存にならないようにするため、国の取り組み姿勢が消極的と懸念している。

最近の現象に、スマートフォンやパソコンでネットやゲームに夢中になる人がいる。学業や仕事が手につかなくなるとネット依存症やゲーム依存症と呼ばれる。依存の対象が薬物やアルコールなどの物質ならば、どれぐらいのめりこむと依存症になりやすいのか目安があるが、ネットやゲームは依存する時間だけでは判断ができない難しさがある。

暗い場所でスマホを見ている子ども
写真=iStock.com/ljubaphoto
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「ネットやゲームは他の依存症と異なり、小学校高学年から大学生くらいが多い。本人は気づきにくく、家族が心配になって相談にくることが多い」

こう話すのは、ネット・ゲーム依存専門心理師でMIRA-i(ミライ)の森山沙耶所長。本人は勉強でのつまずきなどでストレスを抱え、どう向き合えばいいのかわからず、いやなものから逃避するなどの問題を抱えることがある。そこでストレス発散やストレス逃れでゲームなどにはまりやすくなるという。森山さんは相談事例などから、次のようにみている。

「家族関係が悪化していることが多いです。家族が注意や説得しようとすると、本人は家族に対して否定的な気持ちになり、家で居場所がなくなり、ひきこもるようになります」

そうして依存症になった人には、どう接すればいいのだろうか。