【FV】マーケ解剖学_第1回

日本経済新聞社の記者として40年以上にわたり市場を見つめ分析し続けてきた“マエダ先生”こと前田昌孝さんが、投資の基本から最新の市場動向まで平易に解き明かします。ビジネスや投資に生かせる「本質を見抜く眼」を養いましょう。連載第2回は統計の観点から「アクティブ運用」に迫ります。

運用担当者はプロなのになぜ? 統計が明かす「株価指数」に勝てない現実

株式投資信託の運用スタイルはアクティブ運用とインデックス運用に大別できる。アクティブ運用はファンドマネジャーと呼ぶプロの運用担当者が知恵を絞って組み入れ銘柄を決める投信、インデックス運用は追随する株価指数を決め、半ば機械的に運用する投信だ。

ファンドマネジャーはプロなのだから、株価指数に負けるのはおかしいと思われるかもしれないが、統計上は過半の投信が勝てていない。2つの統計でみてみよう。

一つは米国の指数算出会社S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスが定期的にまとめているSPIVA日本スコアカードだ。日本の大型株を対象にしたアクティブ運用投信のうち、何パーセントが株価指数(S&P Japan 500)を上回るリターンを出したのかを分析・公表している。

2025年末現在の実績によると、過去1年では半数をやや下回る46.54%の投信がアウトパフォームした。ところが、比較する期間が長くなるとこの割合は減ってしまい、過去3年では25.30%、過去5年では21.58%、過去10年では22.33%、過去15年では23.96%にとどまっている。

もう一つは実際のアクティブ運用投信のリターンを株価指数の騰落率と比べてみた結果だ。純資産総額250億円以上の国内株投信の1年間のリターン(税引き前分配金再投資ベース)を平均してみると、2022年はマイナス5.85%、2023年は25.84%、2024年は18.70%、2025年は26.65%だった。

2022年を除く3年間は十分に高いようにみえる。しかし、配当込み東証株価指数(TOPIX)の騰落率は2022年がマイナス2.45%、2023年が28.26%、2024年が20.45%、2025年が25.46%だった。2025年はアクティブ運用投信がわずかに勝ったが、あとの3年は負けていた。

アクティブ運用投信が負ける傾向は日本株だけではなく、米国も欧州もほぼ共通している。

インデックス運用が優位に立つ2つの必然的理由

なぜアクティブ運用投信は勝てないのか。第一に株価指数をどう設計するかにもよるが、基本的には株価指数は市場全体の動向を反映していて、市場全体の動向とは要するに個人の個別株投資なども含むアクティブ運用の総平均である。

「インデックス運用のリターン」イコール「アクティブ運用のリターンの総平均」ならば、アクティブ運用投信はインデックス投信に比べて運用報酬(信託報酬)が高い分、個人など最終投資家が享受できるリターンが減るのは自然だ。

第二にいくら株式投資の技能を磨いても、運用成績の向上には直結しないことだ。ファンドマネジャーやアナリストらプロは、企業の財務諸表などを分析し、経営陣にも面会し、どの企業が将来有望かを見分けることはできるかもしれない。

しかし、今が買い、または売りのタイミングとしてベストかどうか、そんなことは恐らく誰にもわからない。同じ株価を見て買いと考える人と売りと考える人がいるから、売買が成立する。それが市場というもので、プロが激しく競うなか、投信のファンドマネジャーだけが勝ち続けるのは非現実的なのである。

(文=前田昌孝)