専門家たちはすでに警告していた

自然の食品がこうしたリスクにつながる要素を多数含み、過剰摂取に陥りやすいことは、食品の安全性に関わる人たちにとっては“常識”です。これを踏まえているからこそ、海外の食の安全に関わる機関のサプリメントへの視線は厳しく、紅麹サプリメントに対しても前回紹介したように、注意喚起や禁止がずらりと並びます。

特定保健用食品や機能性表示食品、その他の健康効果を期待されて摂られるいわゆる「健康食品」についての警鐘は2015年の食品安全委員会の報告書でも示されており、「19のメッセージ」が出されていました。

【図表4】 内閣府食品安全委員会の「健康食品」についての19のメッセージ

今回の小林製薬の問題を予見したかのような内容だと思いませんか? 科学者はそれだけ、機能性表示食品制度を懸念していたのだ、と思います。

病気の人は健康食品を摂ってはいけないのに…

厚生労働省が研究費を出す「厚生労働科学研究」でも2012〜14年度、「いわゆる健康食品による健康被害情報の因果関係解析法と報告手法に関する調査研究」が実施され、健康食品による被害の医学的な解析も行われていました。

興味深いのは、この調査研究で行われた健康食品関連の講演会参加者と医療機関受診者約5000人を対象にしたアンケート調査です。通院中の人の約40%、入院中の約21%の人が健康食品を利用し続けていたのです。製品の形態としては錠剤・カプセル型が多いという結果。健康食品のイメージは、「値段が高い」(そう思う82.0%)、「安全である」(同45.3%)、「効果が期待できる」(同38.6%)、「薬と併用しても大丈夫」(同31.3%)でした。

健康被害をすでに経験した人も約3.4%いました。下痢・便秘、発疹・かゆみ、倦怠感などの症状でした。医療機関を利用していながら健康食品を利用中の人で、利用を主治医に相談すると回答したのは、通院中の人、入院中の人両方ともに、29.3%しかいませんでした。